食通

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食通(しょくつう)とは料理や知識について詳しい人物のことである。グルメ:Gourmet)ともいわれる。人並みはずれて美食を追求する人物を示す美食家(びしょくか)とほぼ同義で用いられることが多い。

概要[編集]

を取る事は動物にとって生命維持のために必須の行動であり、ヒトを含む殆どの(あるいは恐らく全ての)動物においては、報酬系を介して快感をもたらし、他事より優先して行動するようプログラムされている。食事を取る事による充足感、また美味しい物を食べる事による喜びは、精神衛生上好ましい影響を与え、多くの人に普遍的に存在する享楽の様式でもある。

食通ではこれを至上のものとして捉え、より美味な物を空く無き探究心で追求し、時に芸術として賞味し、またはその追求に情熱を傾ける。またこれらの人々は味を感じる器官である、すなわち味覚を鍛錬しフィードバックする事により料理人により良い料理を追求する意欲を掻き立たせ、より洗練された調理様式の開発を促す存在でもある。

食通の活動はそもそもは個人的な営みであるのだが時に文筆を通じ、近年はテレビ出演等により一般人を啓発することも稀ではない。これら食通の活動により、一般に知られていなかった珍味が広く知られる所となる事も多い。

また社会の富裕化に伴い、一般人が常食の範囲を超えレストラン巡りなど美食を追求する風潮のことをグルメブームと呼び、日本ではバブル景気の頃顕在化しだした。そういった風潮の結果、グルメ雑誌やグルメ番組、料理番組等が増加し、かつての食通の役割の一部を担うフードライターや食評論家といったそれを専門とする職業も現れてきている。

更には食に絡む社会問題に対して警鐘を鳴らし、大衆を啓発するインテリのような立場を取る事もある。これらにおいては環境破壊や乱獲・食糧生産方法や消費方法といった多岐に渡り、食という生物にとって基本的な活動を見直すよう求める声も聞かれる(→スローフード)。

類語・同義語・関連語[編集]

美食家は己に内在する「美味しい物を食べたい・食べ続けたい」という欲求に忠実な人である。食通が食による享楽よりもその食に含まれる情報(材料の産地や調理法・他の食通や美食家の評価・歴史など)を重視する傾向が強いのに対し、美食家ではより享楽的に食を堪能する。

日本を含むフランス以外の国でも美食家を示す言葉としてグルメが用いられる。なおこの「グルメ」という語であるが、これは原語において食通のような「食の情報をも重視する人」として、ワイン等の関連情報詳しい人(ワイン通)もGourmetと表現し、食の享楽を追及する人=美食家としてはGourmand(日本ではグルマンともいい、大食漢・大食いと同義)のほうで表す場合が多いようである。

なお「美食」は一般に芸術の域にまで高められた料理を指し、日本ではこのような食事・料理を指してグルメとも呼ぶ。ただグルメは人やその属性・行動様式を示す語であるため、料理その物を指してグルメとは本来言わない。その「芸術的な料理」を賞味する行為を指してグルメという。なお英語では美食を指して単にRich(贅沢・豪華)の語を用い、Rich foodと表現する。

食道楽(くいどうらく・しょくどうらく)は食べるという行為を道楽、趣味とする様式で美食家に近いが趣味が他利的ではない自身に内在する欲求の探求という意味で、やや大衆的である。旅行先で地元のラーメンを食べ歩いたり、腹一杯に好物を食べたり、ガイドブックを片手に有名店をハシゴする行為もこれに含まれる。食通や美食家の中には、謙遜して自身を「食道楽」と形容するケースも見受けられる。

食通の功罪[編集]

食通と称されるためには、(たとえそれがいかに美味なるものでも)毎日同じようなものを食べていたのでは失格である。食通は常に新しい料理、食材との出会いを求め続ける新奇探求性格者と捉えられるだろう。

食通の起源はローマ時代にさかのぼる。皇帝や資産家は金に明かして食道楽に走った。満腹になると鳥の羽で喉を刺激し、食べたものを吐き出し、また食べるということを繰り返した。

その新奇性探求の結果、犯罪的な行為と見なされる活動をするケースもある。例えばツグミは日本に於いて捕獲を禁じられている鳥だが、これを食べるために密猟者を使ってこれを捕らえさせ、調理する事例が挙げられる。このような行為は勿論、違法な犯罪行為である。フランスの前大統領は死期が迫ったとき、保護鳥を料理して大往生したとされる。

またより美味を探求するため最上の素材の最上な部分だけを消費し、それ以外を食品廃材として廃棄するケースもあり、これは法的な犯罪ではないが倫理的に問題視される傾向もある。更には如何な美食家がその実に於いて大食漢であろうともの容量には必然的かつ物理的に限界が存在する。結果的に豪奢な料理を前にして食べ残す事もあり、これが残飯として廃棄される事から、これも「犯罪的な浪費行為(これを罰する法律は無いが)」と非難を被る場合もある。

その一方で食通が流通する食材の良し悪しを判定する事でその産地がにわかに有名になったりまたは没落したりする事も在るが、これに食通自身が責任を取る事は無く、また著名な食通が推した事で乱獲が進み、一般にその食材が得がたくなる事もしばしばである。

ただ、その良く訓練された味覚を持って良き物を評価し悪しき物を不可とする事でその質を知る事ができるため、一般の消費者はその評価に沿って店を選ぶ事で旨い料理を食べる事ができる。しかし近年では商業主義に則ったコマーシャリズムの一環で本当に旨いかどうかが微妙な評価も含まれる事もあり、他方ではにわかに有名になった料理店で料理人が慢心し、質が低下する問題も起こり得る。

舌による味覚や痛覚の脳への伝達は個人差の大きいものであり、食通と呼ばれる者の評価が必ずしも世間の大勢を占めているわけではない。しかしながら、著名な食通によって不可となされたものの価値が著しく落ちることもしばしば見られる。また食通による評価に刺激物(辛いもの)が強いと味がわからないというものもあるが、味覚は顔面神経により、痛覚は三叉神経により伝達することが知られている神経学の立場に立てば、むしろ顔面神経が劣化していると言わざるを得ない面もある。

食通自身の問題[編集]

食通はその飽くなき探究心を持って様々な味覚に挑戦するが、その探究心を満たすために多大な富を必要とする。食道楽で没落した例は多く、その一方で歴史上では美味を独占したいがために料理人を幽閉したりした例もある(架空の話だとされてはいるが、アイスクリームにまつわる伝説・伝承などは興味深い)。

その一方で美食を探求した結果、寄生虫に冒された事例もある。陶芸家で美食家でも知られた北大路魯山人タニシ等の淡水貝に多く見られる寄生虫のジストマによる肝硬変肝臓ジストマ)で亡くなっている。河豚の肝を食べて亡くなった高名な歌舞伎俳優もいる。

欧州ではバタークリームを多用した料理も美食として珍重されたが、これにより心臓を患ったり、また肉料理中心の美食で高尿酸血症痛風に陥った美食家も数知れない。健康を害しては本末転倒かも知れないが、その食のためなら生命をも賭すという姿勢は後々の語り草にもなる程である。

著名な食通[編集]

ブリア=サヴァランBrillat-Savarin 1755年 - 1826年):「食聖」とまで称えられ、いまなお美食家の必読書とすら言われる『美味礼讃』を著した事で知られる。有名な言葉には「どんなものを食べているか言ってみたまえ、君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」がある。彼によって美食学とも訳されるガストロノミーの考えが提唱された。

関連項目[編集]

ある意味では食通の対極にいる存在といえよう。
有名な格付けガイドブックで、星が付くだけでも客が押し寄せるという。
ミシュランと並ぶ、権威あるガイドブック。
公平性・正確性は常に様々な民族に於いて議論の的であるため、必ずしも妥当ではない可能性がある。
西欧の美食家が愛好する三大珍味。
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