自己イメージスクリプト

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自己イメージスクリプト(じこイメージスクリプト)は健康心理学者の宗像恒次によって提唱された概念。自己イメージ脚本ともいう。

概要[編集]

ウェルビーイングは、本人の自己イメージによって決まる面がある。自己イメージがいいと、自分の未来を良く予期しやすく、また過去を良く評価して後悔や罪意識を持つことがないからリラックスする。自己イメージが悪いと、未来を悪く予知し、不安が絶えなく、過去を悪く評価し、うつになり、緊張気味となるからである(宗像、2006)。
宗像(2006年)はその自己イメージにはスクリプト(脚本)があり、自己イメージスクリプト(Self Image-script)によって決まると考えた。自己イメージは、過去の自己についてのイメージ体験総体からなる象徴される物語的筋書きから構成されるが、それは過去の物語からつくられる「思い込み」から生じている。その「思い込み」が次の自己イメージをつくりだすスクリプトとなり、同じようなイメージ体験を繰り返させると考えた。
たとえば、いま自己を今振り返えった時に、自己イメージはどうであろう?「凛としている自己」とか、「おどおどしている自己」とか、という自己イメージが存在するであろうか。それは、自分について感覚器から入力された過去のあらゆる感覚情報と、そのとき自分が自分の欲求を充足する快感系の感情をもつ体験をえたのか、不快系の感情をえた体験をえたのかを示す感情情報の結合からなる「自己についての過去の体験物語」から構築されているものである。それは自分の外見や身体感覚などを捉える感覚情報とそれを評価する感情情報からなっている物語を形成している(宗像、2006)。
自己イメージをよく評価できる場合、感情は希望、充実、満足、感謝、意欲、愉しさ、自信を持ち、また身体感覚も良好で、報酬系の自己イメージをもっており、ウェルビーイングが良い状態といえる。その反対に、気持ちが悲しい、寂しい、孤独感、無力感、悔しい、不満、敵意、嫌悪感、気がかり、焦り、恐れ、苦しさをもち、身体感覚も不良な場合は、嫌悪系の自己イメージを持っているとした。
不快系の感情をつくりだす自己イメージスクリプトとして、不安や諦めから自分の感情を抑えやすいと自己イメージする自己抑制型、周りの察しを求め、それが叶わないと怒り、悲しみ、不安を溜める対人依存型、自分の問題を直視したり、考えるのを回避する問題回避型、自分のことを他人事にみて、自分の問題にもかかわらない自己解離型、自分を我慢させやすく、自分の気持ちを感じられない感情認知困難型、自分をよく評価できない自己否定型などがある。これら自己イメージスクリプトにはそれぞれの自己イメージの思い込みの度合いを測る信頼性と妥当性のある心理尺度が開発されている(宗像、2006)。

概念形成の歴史[編集]

私たちが海で地平線をみているとき、それをどのように知覚するだろう。人工衛星の映像記憶から地球が丸というイメージ表象を持つ現代人は、丸みを帯びた地平線を知覚するだろう。中世西洋人は平らでその端は滝になっていて水が落下する絵画を見ているので、平らでその先に行くことは危険と認知するだろう。 心理学者のBartlett(1932)は、このように知覚や解釈や未来の予知は、過去の経験や知識から期待(予測)に合致するよう再構成されるとし、過去の経験や知識という「スキーマ schema」に基づいていると考えた。スクリプト(script)という用語はSchank と Abelson (1977)によって提唱され、「行為者、対象物、場所等から成り、因果、時間的に順序づけている一連の目標指向についての一般的な知識構造」と定義した。たとえば、レストランに入ったら、通常、人は「メニューを見る→注文する→料理が来る→食べる→お金を払う」といった一連の動きを予想・期待する。その期待(予想)される一連の動きの概念的枠組みをスクリプトと定義し、ひとはそれに基づき知覚し行動するとした。現在では、スキーマとスクリプトのどちらも同じよう意味で使われ(宗像、2006)、2つの概念を厳密に区別することはできない。 宗像は、従来の「メニューを見る→注文する→料理が来る→食べる→お金を払う」といった一連の動きを予想・期待する一連の動きの「概念的筋書き」をしめす従来のスクリプトに対して、そのような概念的筋書きは、見知らぬ海外の旅行案内にもとづく行動は別にして、通常は用いていないと考えた。ひとはレストランに入った過去のすべてのイメージ体験記憶(感覚情報と感情情報からなるイメージ表象)から象徴される「物語的筋書き」をもちいて行動していると考えた。それをイメージスクリプトと名づけた(宗像、2006)。

自己イメージスクリプトとウェルビーイング[編集]

宗像は、不快感をつくりだす自己抑制型などの自己イメージスクリプトは、「見ない、聴かない、言わない、感じない、考えない、かかわらない、あるいは攻撃する」ことで生き残るサバイバル脚本であるとした(宗像、2009年)。そのサバイバルのための自己イメージスクリプトに基づく認知や行動は、不快感情のみならず、身体不調や、自分でコントロールできない行動の存在が示す不良なウェルビーイングをつくりだしやすい。たとえば、自己抑制型の自己イメージスクリプトを測定する尺度項目には、「自分は気持ちを抑えてしまいやすい方である」という項目があるが、自分の気持ちをもし抑えないとどのような感情が生まれますかと聞くと、「不安」という。それを心の声にするとどうなりますかと問うと「どう思われるだろうかとか、こわい」という。では閉眼し、その心の声を繰り返すとどのような身体感覚になりますかと問うと、「肩が張る、心臓ドキドキ、呼吸が苦しい」という。だから気持ちを言わないと安心感をもてるという行動感覚が形成される。つまり、ひとに自分の気持ちを伝えようとすると、肩が張る、心臓ドキドキ、呼吸が苦しいという、いわば徒競走まえ並みのノルアドレナリン量が分泌され、心臓が拍動し、骨格筋の緊張する人は、自分の気持ちを言うことはできないだろう。これは「恐怖の条件付け」がされているからである(宗像、2009)。 この緊張がもし毎日の日常ならたとえ無自覚でも、血流障害が生じ、肩の凝り、頭痛、冷え、不眠など交感神経緊張症をもつことになる。その不快感は、過食、飲酒、喫煙、セックスなどで代償する嗜癖行動をつくる。またその緊張症の度合いが強まったり、持続することは、大量のアドレナリンの受容体刺激で、白血球の中の顆粒球を異常に増多させ、顆粒球の放つ大量の活性酸素で消化器性潰瘍などをつくる。活性酸素の暴露が長期間持続することで動脈硬化がすすんで、脳血管系障害や心臓動脈性疾患などになったり、また遺伝子を損傷させ、悪性腫瘍が生じる(宗像、2006;宗像、小林、2007)。 換言すると、「見ない、聴かない、言わない、感じない、考えない、かかわらない、あるいは攻撃する」ことで生き残るためのサバイバル脚本とは、ストレス脚本であり、実は病気脚本である。その反対として、まわりの状況をよく見て、聴いて、感じて、考えて、表現し、かかわり、他と助け合い、自分を愉しむ愛情脚本としての自己イメージスクリプトである自己表現型、対人自立型、問題解決型、支援訴求度、自己集中型、自己肯定型などはリラックス脚本であり、健康脚本となる(宗像、2008年、2009年)。

参考文献[編集]

  • 宗像恒次 『SAT療法』金子書房、2006年
  • 宗像恒次 『困窮体験が促す本当のライフキャリア形成 – SAT 表情再スクリプト化イメージ法による支援』ヘルスカウンセリング学会年報、15:75-92頁、2009年
  • 宗像恒次 『生き方革命をサポートするSATの健康心理療法』ヘルスカウンセリング学会年報、14:1-10頁、2008年、ウェルビーイング

関連項目[編集]

ウィキペディア無し small.png ウィキペディアにも「自己イメージスクリプト」の項目が執筆されていましたが、削除されてしまいました