留年

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留年

留年(りゅうねん)とは、、学校に在籍している児童生徒学生(在学生)が、何らかの理由で進級しないで同じ学年を繰り返して履修すること。落第(らくだい)とも言い、学校長の権限によって生徒、学生に対しこうした処分をすること。原級留め置き(げんきゅうとめおき)、又は留級(りゅうきゅう)と表記される場合もある。対義語は「及第」・「通常の進級」である。

類似のケースに当たるものに、小学校就学を標準よりも遅らせる「就学猶予」、学校卒業後の上級学校への進学時に期間が空く「過年度進学」がある。

留年の例[編集]

留年の処置にされるケースには以下のような場合がある。

  1. 成績の不良
  2. 長期欠席(不登校で出席日数が不足している場合)
  3. 私生活面においてだらしない(遅刻が多過ぎる、授業中寝ている、課題のレポート未提出など)
  4. その他生徒・学生としてふさわしくない行為があった場合
  5. 長期の病気療養(事故や病気による入院、加療の必要がある場合)
  6. 休学(海外留学等の場合)
  7. その他、本人が希望する場合(一部の大学では延長して在籍が認められている)

学校制度[編集]

日本の学校制度では、飛び級経験者などの例外を除き、全ての留年経験者は通常に進級した児童・生徒・学生(就学猶予、留年、過年度進学などを経験しなかった人)より4月1日時点で1歳以上高年齢であるが、高年齢の在学生には過年度進学者なども存在するため、高年齢の在学生の全てが留年経験者であるとは限らない。

幼稚園小学校中学校など、前期中等教育以下の学校では、実務上は下の学年を履修していなくても、所属できる最高学年(いわゆる年齢相当学年)に編入学できる。こういった、高年齢児童生徒の飛び級ができることが、学齢期(15歳以下)の学校に共通する特徴である。しかし、高等学校高等専門学校大学など、後期中等教育以降の学校では、年齢が高くても、以前に同等学校などで履修したことがない限り、1年生から履修しなければならない。

学校教育法などでは、諸学校の在学年齢/卒業年齢には上限は設けていないが、高等学校以上の課程において、留年できる回数の上限を設けている学校もある。日本では前期中等教育までは、就学猶予・留年・過年度進学などが数少ないため、外見上上限があるように見えるだけである。しかしながら、ほとんどの学齢児童が6歳から就学し、留年することなく15歳で中学校を卒業するということが常識の様になっており、学齢を過ぎた人の在学は通常の小中学校や関係機関などの現場ではほとんど想定されていない。

高等学校以上の課程における留年の場合、学校と校則によって差異はあるが、極めて厳格な校則だと「一度たりとも留年を認めず、即退学とする」場合もあり(大学院修士課程に多い)、続いて「留年は一度だけ認めるが、二度目の留年が決定した場合は、即退学とする」(二度の留年がない)場合もある。

なお体操着など学年毎に仕様が異なる学用品がある場合、留年しても買い替えは強制されないことが多い。2010年度から実施される公立の高校無償化に関しては、留年者の修了年限を越えた場合の適用については学校設置者(地方公共団体)の対応に委ねられる(国費ではなく学校設置者の負担となるため)。国立及び私立高校在学者対象の高等学校等就学支援金制度は、修了年限を越えた者には適用されない。

公的な表記[編集]

公式用語は「原級留置」であるが、「留置」という言葉は留置場を連想させるとして、「げんきゅうとめおき」と発音したり、表記も「原級留め置き」としたりする人もいる。戦前は「原級据え置き」ということも多かった。また、「原級」という言葉は明治時代の等級制の時代の名残であり、学年制の現在では「原学年留置」であるのだが、慣例的に原級留置の語が使われている。

また、「留年」は単位制主体である学校、例えば大学などで使われる用語であり、「原級留置」、「落第」は学年制である学校、例えば小学校・中学校・学年制の高等学校などで使われる用語である。そのため、「原級留置」は「落第」と同じ意味であるが、「留年」とはやや意味が違う、という説もある。しかし一般的には三者は同じ意味で使われる。

なお、特別支援学校の高等部で知的障害者を対象とする課程においては、慣例として本人が希望しなければ原級留置を行っていない場合も多々ある。

生活上の現役生との相違点[編集]

日本では最低年齢の在学生が一般的であるが、原級留置者に代表される、最低年齢ではない在学生は、必ずしも一般の在学生と同様な学校生活、学校外生活を過ごせるわけではない。これについては、「過年度生#生活上の現役生との相違点」と「年齢主義と課程主義」で詳述。

実態と統計[編集]

公立の小中学校においては、教育委員会規則で「校長は、児童又は生徒を原級留置したときは、速やかに教育長に報告しなければならない。」などと定められている場合が多いため、教育委員会は公立小学校の原級留置者数を把握しているものと思われる。しかし、小中学校での原級留置については、日本全体レベルでの統計が公表されていない。後期中等教育以降での原級留置数は公表されている。

なお、国勢調査では小中学校の在学者と年齢を区分した統計を出しているので、学齢超過の小中学生の人数を知ることができる。この統計については、「年齢主義と課程主義」で詳述している。ただしこれは、単なる年齢基準の学齢超過者統計なので、学齢期の原級留置者の正確な数を知ることができるものではない。

小学校・中学校[編集]

日本学校制度では、大部分の公立小学校・中学校の学年年齢主義を取っており、就学猶予者、帰国子女などの特段な事情がある場合を除き、年齢によって所属する学年が決められる運用がされている。学校教育法施行規則では小中学校の各学年の修了や卒業は児童生徒の「平素の成績」を評価して認定するよう定めており、児童生徒の成績不良を理由に校長の判断で原級留置させることも可能であり[1]、学年末には進級判定会議が存在する。しかし、実務上は公立小学校・中学校において成績不良であっても進級をさせている。

かつては病気療養等を理由とする長期欠席による原級留置が公立小中学校における学校判断である程度見られた。これは1953年兵庫県教育委員会教育長の照会に対し、文部省初等中等教育局長が「一般的にいって、第三学年の総授業時数の半分以上も欠席した生徒については、特別の事情のない限り、卒業の認定が与えられないのが普通であろう」と回答しており(s:課程の修了又は卒業の認定等について)、この通知が公立中学校において出席日数を元に進級・卒業の判断をする根拠となっていた時期もあった。しかし、1990年代に入って長期欠席児童生徒が急増し、1990年代以降は児童生徒の保護者が強く希望した場合に原級留置が僅かに取られる程度となり、前述の通知は事実上効力を失いつつある(ただし、近年でも児童生徒の保護者の意思に反して原級留置にした例も極少数ながら存在する)。

一方で保護者が望んでも年齢主義を理由に学校または教育委員会等の関係機関から拒否されるケースもあり、児童の親(保護者)が長期欠席を理由に積極的に留年を求めて拒否されて強制進級となったために裁判に訴えて、1993年8月30日に神戸地方裁判所で「進級は正当」との判決が下った神戸市立小学校強制進級事件の例がある。

近年ではひきこもりになった子供が数年に渡って通学しないにも拘わらず進級させており、その子供がのちに小中学校に通おうとしても、かなり困難なものとなってしまう。中には小学生でひきこもりになり、中学校に一日も通っていないのに、中学校を卒業させる事例すらある。

なお、入試・進級試験制の私立の小学校・中学校では成績不良による留年例はある程度見られるといわれる(小学5年生以上で成績不良による原級留置があることを明言している玉川学園の例など)。

2004年9月、当時の文部科学大臣河村建夫朝日新聞のインタビューに応じ、これまでほとんど死文化していた義務教育期での留年を、対象を広げられるように研究すると話した。

自治体教育委員会は、各学校から報告される原級留置者数を取りまとめているため、内部記録としては情報がある場合がある。これについては、質問をすれば人数の回答が返ってくる場合もあれば、「公表していない」「記録自体がない」と回答される場合もある。たとえば札幌市の場合、2007年度は中学1年生1人、2008年度は小学1年生7人と小学2年生1人、2009年度は小学1年生2人と中学1年生2人と中学3年生2人であり、仙台市の場合、「ここ数年はいない」との回答である。このように政令指定都市レベルの人口でも、ゼロか数人程度と少ない。

高等学校[編集]

高等学校などの後期中等教育以降の学校では、成績不良や単位不足などの場合は原級留置の候補者となるが、クラブ活動、他の教科の成績等の学業態度を総合的に考慮し原級留置となるか否かが決められる。一部の教科に対しては単位不足ではあるが、他の教科で秀でた成績を残している場合など、才能の芽を伸ばすという意味で原級留置の対象から外されることが多い。 ただし、単位制の学校では、学年がないため、留年自体が存在しない(単位不足で卒業ができない例はある)。特別支援学校高等部では留年がない。

高等専門学校[編集]

高等専門学校(高専)では、大学と同様に一定の単位数以上をその学年で取得できなかった場合、留年となる。これは、一般の高等学校の修業年限に当たる1~3学年においても例外ではない。

多くの高専で、本科(準学士課程)に10年を超えて在籍することは出来ず、また同一学年には2年を超えて在籍することは出来ないため、上の学年に二度続けて進級できなかった場合には、除籍となる。高専をストレートに5年間で卒業できる者は、全国平均でおよそ3/4である。

大学[編集]

大学回生制度(主に関西地方)を採用している場合は成績にかかわらず、1年おきに数字を増していくので入学5年目であれば5回生、6年目であれば6回生と表記されるため留年という制度はない。この場合でも8年を越えて在学することは不可能である。

なお休学期間は在籍年数にカウントされないため、その場合は8年以上同じ大学に在籍している可能性がある(ゴダイゴのタケカワユキヒデが音楽と学業を両立させるためこの制度を利用し、休学と復学を繰り返して12年間在籍した)。

大学生が留年する理由にはさまざまなものがあるが、留年者を出身高校別に分析してみると相当のばらつきがある。特に「管理型の進学校、全寮制」の留年率は高いと東京大学のミニコミ誌『恒河抄』は分析している。

就職留年[編集]

通常、留年は学生が進級・卒業要件を満たすことが出来なかった場合に起こることであるが、近年では就職が決まらなかったなどの理由で、卒業要件を満たしながら意図的に卒業せず大学に学籍を残す例が急増している。そうしたことを背景に、「希望留年制度」を新たに設けた大学も存在する。

原級留置の例[編集]

事件[編集]

留年を経験した著名人[編集]

創作上の描写[編集]

小・中学校[編集]

小学校中学校における留年はあまり一般的ではないため、漫画アニメなどのフィクションにおいてはあまり登場しないが、全くないわけではない。ただし、留年と明言されなくても留年したことがあるキャラクターもいると見るのが自然である。また、サザエさんのように(制作の都合上)年を取らずに同じ学年を繰り返すのは、原級留置とは言わない。

足立花(あだち はな)
吉河美希作の漫画「ヤンキー君とメガネちゃん」の主人公。中学時代に一度留年し、高校へ入学した経緯がある。
一堂零(いちどう れい)ほか「3年奇面組」の登場人物たち
新沢基栄作のギャグ漫画「3年奇面組」の登場人物。数多くのキャラクターが中学3年生時に留年し、卒業できないというシーンがある。ただし、高校受験の不合格が理由とされており、現実にはこのケースでは卒業できるためありえない(過年度生参照)。
海老原昌利(えびはら まさとし)
森田まさのり作の漫画「ろくでなしBLUES」の登場人物。中学時代に留年を経験し、通っていた帝拳高校の教師に主人公の前田太尊以上と陰で言われる。
江本智恵(えもと ともえ)
西尾維新作のミステリー戯言シリーズの登場人物。中学校時代に重病で長期入院し、出席日数不足のため留年した。
川田章吾(かわだ しょうご)
高見広春作の小説「バトル・ロワイアル」の登場人物。物語本編の前年に、全国の中学3年生を対象とした殺人ゲーム「プログラム」に巻き込まれており、生還したものの体中を負傷し長期入院、1年留年した。尚、この物語の舞台・大東亜共和国は日本に良く似た別の、いわゆるパラレルワールド的な国家であるが、学校の進級制度等は日本とほぼ同じものと考えられる。
坂口松太郎(さかぐち まつたろう)
のたり松太郎の主人公。中学校で3年留年した。
佐原秀志(さはら ひでし)
藤たまき作の漫画「私小説」の主人公。目の病気などのため、養護学校に入学したり留年したりしたあと、私立中原中学校に入学した時点で最低年齢よりも2歳年長。
薗田 優樹(そのだ ゆうき)
すえのぶけいこ作の漫画「ライフ」及びそれを原作としたテレビドラマの登場人物。中学時代、クラスメイトの狩野アキラからいじめを受け続けて不登校になり、1年留年した。
橘柑子(たちばな かんこ)
学研の学年雑誌「学習」シリーズで90年代に連載していた漫画(タイトル求む)の主人公。病気療養のため小学生時代に留年し、1年下の弟の橘青葉(たちばなあおば)と同級生になった。
藤堂加奈(とうどう かな)
ディーオー制作のゲームソフト「加奈 ~いもうと~」の登場人物。重い腎臓病を患っており、ゲーム中のエピソードで中学校までに2年留年して卒業し高校に進学したシーンがある。
長山こはる(ながやま こはる)
フジテレビアニメさくらももこ原作の「ちびまる子ちゃん」の登場人物でまる子と同じクラスだった、長山君の妹。小学校1年生。重い病気にかかって、小学校を長期欠席をし、入院をした。病気を克服し、退院した後に、もう1回、小学校1年生の留年となった。
七瀬香奈花(ななせ かなか)
丸川トモヒロ作の漫画「成恵の世界」の登場人物。超光速の星船(いわゆる宇宙船)での航行によるウラシマ効果のために中学1年生でありながら戸籍上は26歳となる。つまり書類の上では13~14留したことになる。
宮内英二(みやうち えいじ)
日本テレビのスペシャルドラマ「女王の教室エピソード2~悪魔降臨~」の登場人物。心臓病で1年留年した。なお、13歳の時に小学6年生であった。
毛利さやか(もうり さやか)
大島永遠作の漫画「女子高生」の登場人物。中学1年生の時に、重度のアトピーが原因で、1年留年した。
森村天真(もりむら てんま)
コーエー(ルビー・パーティ)の女性向け恋愛アドベンチャーゲーム(キャラクターデザインは水野十子)「遙かなる時空の中で」の登場人物。妹が行方不明になったため、探しに出て中学校を留年した。
柳沢真由那
14才の母」、市ノ瀬未希のクラスメイト。作中では明言されていない理由で、中学校を1年留年している。冷酷な性格だったと考えられる。

高校[編集]

一方、高等学校以上の課程における留年の場合は、ある程度認知されているために、創作上に出てくる場合もときたま見られる。しかしながら日本社会の一部では、高等学校以下の学校では最低年齢より1歳でも年長であるとそれが特徴的なものであるため、作中でも留年したことや他の同級生より年上であることを個性として強調されている場合も多い。

伊吹風子(いぶき ふうこ)
Key制作のゲームソフト「CLANNAD」の登場人物。交通事故による昏睡のために登場時点で2年留年していた。
浦島景太郎(うらしま けいたろう)
赤松健作の漫画「ラブひな」の主人公。東大の入学式当日に日本武道館光る玉ねぎに押しつぶされて足を骨折、その療養と、考古学の師の発掘旅行に付いていくために1年留年した。
戎崎裕一(えざき ゆういち)
橋本紡著のライトノベル、およびリメイク版の小説「半分の月がのぼる空」の主人公。A型肝炎にかかってしまい、入院中にしばしば安静を保たなかったために入院期間が延び、留年の危機に。退院後、進級判定試験の当日に風邪をひいて高校2年生を留年した。
草薙京(くさなぎ きょう)
SNKプレイモア(旧SNK)制作の格闘アクションゲームザ・キング・オブ・ファイターズ」シリーズの(オロチ編の)初代主人公。95で前作94から1歳年をとった以降は歳をとらない。その為、高校を2年留年していつまでも高校生である。
セイレイ・コーラス
永野護作の漫画、「ファイブスター物語」に登場。コーラス王朝の王女だが、魔導大戦に参戦した事等で落第がほぼ確定している。ちなみに、彼女が通うウィンド学園は出席日数が足りなければ王族であっても落第にしてしまう学校で、歴代のコーラス王は(学業より公務を優先する為)全員落第している。この為、「落第こそコーラス筆頭の証」という奇妙な理論がまかり通っている。もっとも、彼女の場合は素行の悪さも原因と思われる。
大道寺(だいどうじ)
マーベラスエンターテイメント(現・マーベラスAQL)のゲームソフト「閃乱カグラ -少女達の真影-」の登場人物。1年生時に最終試験に受かっているものの、強者との戦いを求めるため、3年生のままで意図的に留年し続けている。
古河渚(ふるかわ なぎさ)
伊吹風子と同じく、CLANNADの登場人物。主人公から見ると一歳年上だが、病気のため2度目の高校3年生で主人公と同級となり、2回の留年の末、20歳と3ヶ月弱で高校を卒業する。
吉川恵(よしかわ けい→よしかわ めぐみ)
つだみきよ作の漫画「革命の日」「続革命の日」の主人公。半陰陽による性別変更のため、異性としての生活の訓練と療養をかねて高校生時代に留年した。
和歌山シンゴ(わかやま しんご)
「ヤンキー君とメガネちゃん」の登場人物。成績は特に優秀な方(学年で10位以内に入るほど)だが、ある約束を果たすため意図的に留年している。舞台である高校(紋白高校)の校則で、一学年につき一度だけ留年が認められているため、それを利用して1年生から3年生をそれぞれ2回ずつ経験している。

脚注[編集]

  1. 学校教育法施行規則第57条・第79条

関連項目[編集]