ライトバン

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ライトバン自動車の分類上の呼称である。

概要[編集]

バンの成り立ちは、トラックの荷台部分を貨物室とした「有蓋商用車」であり、同様の車体形状をもつが乗用車を素にして誕生したステーションワゴンとは誕生の経緯そのものが異なる。よって両者は外観的には同様の形状をもっているが、自動車としての本質は似て非なるものである。

日本での「ライトバン」という呼称は、ライトトラックライトバスなどと同様、それぞれの車型の中では比較的小型で、積載量の少ないものを指す英語に由来する。日本の自動車小型車中心であることからこの呼称が定着していたが、近年ではカタログ表記も単に「バン」とされることが多い。荷室に窓のないものをパネルバンやブラインドバンと呼び、区別することもある。

日本では貨物自動車の一種で、2ボックス、1.5ボックス、ワンボックスのいずれかの車体形状を持ち、後席を折り畳んで荷物室を拡大することができるか、もしくは後席を備えていない物を指す。後席を備える車両の場合、前席後端より後方のスペースの内、荷物室が過半を占めることと規定されている。 また、以前は荷室側面窓(リアクウォーターウインドウ)を荷物から保護することが法律で義務付けられており、荷室窓には保護棒が取り付けられていた(現在この規定は廃止)。また、急制動時に重量物の移動から乗員を守る保護機能(座席背面の鉄板や保護棒など)も必要である。

軽自動車規格を超える登録車の場合、車検は新車の初回のみ2年後でその後は1年ごと、小型車(全長4.7m×全幅1.7m×全高2.0m、ガソリン車において総排気量2000cc、ディーゼルは排気量制限なし。)枠内の車両は4ナンバー、どれか1要素でも超える車は1ナンバー(普通貨物自動車)と規定されている。以前の小型車はホイールベースの上限も定められており、1958年昭和33年)までは2,500mm、それ以降は2,750mmであった。

車両価格(初期費用)と維持費を抑えるため、トランスミッション(変速機)はマニュアルが多かったが、オートマチック限定免許の普及もあり、乗用車のマニュアル比率が極端に減った現在では、パワートレーンをそれらと共用する都合と、ドライバーの省力化のため、オートマチックの比率が高まっている。

種類[編集]

2ボックスタイプ[編集]

以前のライトバンとは、この車型を指した。専用の2ドアボディーが標準であったが、2代目トヨタ・スタウトのように、左側のみにリアドアを持つ1+2ドアもあった。後に乗用車派生、もしくは乗用車のコンポーネントを流用したモデルの増加に伴い4ドアが標準となる。

車高が低く、前部にボンネット、後部にラゲッジスペースを持つ形状で、「ボンネットバン(ボンバン)」や「エステートバン」とも呼ばれる。ステーションワゴンタイプ(従来からライトバンと呼ばれている車型)が主であるが、軽自動車にはハッチバックタイプも存在する。以前は登録車の一部にもハッチバックタイプが存在したが、軽自動車と比較して税制や車検の面で不利になる事もあり、日本では現在、生産されていない(スズキ・カルタスバン/いすゞ・ジェミネットホンダ・シティプロ、ダイハツ・シャレードバン、トヨタ・スターレットバンなど)。

このタイプの最大積載量は、軽自動車で200kg、登録車で350 - 500kg程度であり、貨物車では最大積載量が最も少ない。架装などに伴う改造によって8ナンバーなどを取得した車両と、ガソリンエンジンで排気量が2.0Lを超えるものを除き、すべての車種が4ナンバー(小型貨物自動車)である。


フルゴネットタイプ[編集]

小型の欧州車に古くから見られる、大衆車の前半と大きな荷箱とをつなぎ合わせた形状のバン。

フルゴネット(Fourgonnette)とは、フランス語で小型貨物車(小型トラック)を総称するカミオネット(Camionnette)のうち有蓋車を指すものであり、実質は大衆車派生の小型ボンネットバンに対する呼称である(大型貨物車はカミオンとフルゴンと呼ぶ)。

フランス以外の欧州各国にも同類は見られるが、日本では、自動車雑誌で紹介される機会や輸入される同種の中でもフランス車が取り分け多く(シトロエンAU/AZU/AKC15ルノー4Fエクスプレスなど)、特に認知度が高いことと、英語のVanPanel vanに比べ簡潔に車型の特徴を表すこともできるため、この呼称が広まった。

乗用車の前半分を流用していることでは2ボックスタイプの延長線上にあるともいえるが、車体後半のみが大きな箱状となっていることが特徴であり、また、ピックアップトラックにパネルバンタイプの荷箱を架装したものとも異なり、キャビンと荷箱の外板はつながっており、室内もほとんどの車種で運転席と荷室がつながっている。その成り立ちから、キャブオーバー型に比べ運転姿勢や操縦安定性が乗用車に近い利点があるが、スペース効率ではキャブオーバー型に譲る。

運転席上を控えめなハイルーフとした車種もあったが、低いボンネットと大きな荷箱を組み合わせたスタイルに長らく変わりは無く、1977年マトラが起死回生を期して放ったランチョも、SUV風の外観をまとい、乗用バージョンのみとしてフルゴネット派生の乗用モデルとの差別化を図ってはいたが、基本的な成り立ちは従来の発想を大きく超えるものでは無かった。

しかし、奇しくも1997年に相次いで発表されたルノー・カングープジョー・パルトネシトロエン・ベルランゴは、従来から備わっていた乗用ユーティリティービークル(一時の日本でのRVの解釈にも近い)としての資質をさらに高めるため、専用のフロントボディーを与え、屋根全体をスムーズなラインでハイルーフ化し、スライド式のリアドアを持つ4ドア車を追加した。これらの改良はいずれも初めての試みであったが、これらが大きな成功を収めたことから他社も一斉に追従する結果となり、現在このカテゴリでは日本で言うところのトールワゴンスタイルが標準となっており、内装と装備を充実させた乗用バージョンをラインナップに揃えることも至極当然となっている(シトロエン・ネモ/フィアット・フィオリーノ/プジョー・ビッパーフィアット・ドブロフォルクスワーゲン・キャディ IIIフォード・トランジットコネクト/トルネオコネクトなど)。これら最近の車種のバックドアは、商用モデルが観音開きであるのに対し、乗用モデルは跳ね上げ式となっている。

日本車ではかつて日産・AD MAXスズキ・アルトハッスルなどが存在したが[1]機械式駐車場の高さ制限や、2ドアの不便さ、後述のワンボックスタイプがすでに広く普及していたことなどから定着はしなかった。唯一の成功例としては、内外観から仕事グルマらしさを極力排除した日産・エスカルゴがある。


モノスペースタイプ[編集]

欧州車に多く見られる、MPVミニバンとの共通設計、あるいは派生車種で、いわゆるモノスペース商用車。背の高いキャビンと荷室を持ち、全長に対してボンネットが短いため、日本では1.5ボックスと呼ばれることもある。ほとんどが乗用・客化兼用バージョンをラインナップする。

良好な操縦安定性と無理のない運転姿勢、十分に確保されたクラッシャブルゾーンなどの利点を持つが、その分荷室容積は圧迫される。


ワンボックスタイプ[編集]

ワンボックスタイプは車高が高く、独立したエンジンコンパートメント(ボンネット)も無いため、床面積の多くを荷室に充てることができ、スペース効率と取り回しに優れ、アジアの一部では主流となっている。一方、ボンネット付きのスタイルに比べ、運転姿勢や前方衝突安全性の面で不利となることから、現行の日本車では最低限のクラッシャブルゾーンとキャビンの変形防止構造を有している。

エンジンの搭載位置は、前席下のキャブオーバー型、前席下か前席前のセミキャブオーバー型、車体中央部床下のミッドシップ型、後車軸より後方のリヤエンジン型がある。後2者は主にスペースに制約の多い軽自動車に採用されている。

ワンボックスタイプでは、車種によってはシートを3列持つものもある。最大積載量は、軽自動車で350kg、登録車で600 ~ 1250kg程度である。


用途[編集]

自動車税自賠責保険の掛け金が安く、軽自動車を除いて車検の期間が1年と短いことから、主に、企業商店関係で、物品の運搬や配送に用いられることが多く、ほとんどの場合は車体に「かんばん」(企業や商店の名称)が記されている。少数ながら、事業(青・緑)ナンバーを取った郵便の集配や、運輸業での使用もある。専用集配車が登場する以前はもちろん、現在でも宅配便では多くのワンボックスタイプが使われている。

個人で保有するケースとしては、大工や配管設備など、何らかの商売を営んでいる(個人事業主)、キャンピングカートランポにする場合、余分なシートや内装材が付いていない分ワゴン仕様よりスペースを取り易くて安上がり、税金や価格が安い、商用車独特の外観のスッキリ・チープ感に質実剛健さを感じる、リアスムージングのしやすさなどが挙げられるが、基本的に軽自動車を除き、少ない(商用軽ワンボックスは個人での保有も多い)。

車種一覧(日本の現行車種)[編集]

普通車[編集]

ステーションワゴンタイプ

モノスペースタイプ

ワンボックスタイプ

軽自動車[編集]

ハッチバックタイプ(軽ボンネットバン

ワンボックスタイプ


関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. このほか、M2オートザム・レビューをベースとしたコンセプトカー、「M2 1004」を1991年東京モーターショーに出品している。